「認知療法」とは,一言で言えば,偏った考え方のパターンを自分でチェック・見直すことです.メンタル疾患に陥った人は,自分自身に対しても周囲の人に対しても,また将来に対しても悲観的になり,元気な頃より考え方が偏り気味になっている傾向があります.認知療法はこのような点に注目し,自己を見つめ『考え方=捉え方=認知』に偏り過ぎていないか【自分で気付ける=自分でストレスに気付ける】ようにしていきます.
『認知の歪み・偏り』と言われると,自分の性格や人格を否定されたように感じてしまうかもしれません・・・.でもご本人を否定しているわけではありません.症状の原因となる【考え方】に,自分で焦点を当てるのが認知療法.ストレスがかかった時,明らかに極端な考えの偏りに気付くことが第1歩.自分と周囲の状況を見つめ直し,極端だった偏りを緩めて自分への負担を軽くする・・・ストレス・マネジメントでもあり,一種の体質改善みたいなものと思って下さい.
<悲観的な『認知』が自分を苦しめる>
私たちは,物事をありのままに受け止めているのではなく,自分なりの心のフィルタを通して見ています.この物事の見方・考え方を『認知』といいます.
通常なら認知と現実世界にそれほどの大きな食い違いはありません.ところが,うつ病等になると,あらゆる事を極端に悲観的・否定的に捉える傾向が出てきます.この悪循環によりウツウツ状態から脱せなくなります.
<自分,周囲,将来,あらゆる事に否定的>
悲観的・否定的な考え方は,自分自身,世界(周囲との関係),将来の3つの領域に現れます.これを『否定的認知の三徴』といいます.
自分に対する否定的な認知として,思考力や集中力,判断力の低下などを原因に「人間として失格だ・・・」というように,自分の価値を否定するようになります. 周囲に対する悲観的な認知として,自分に自信がもてないと,「誰も相手にしてくれない・・・」と周りにも懐疑的になります.そして積極的に人と関われず,引きこもり状態になることもあります. 将来への希望の喪失は,自信も持てず,周囲の人間関係にも不安があると,何も信じられなくなり,ひいては自分の生存価値を見出せず,希死念慮にとりつかれることもあります.
<認知を見直し改善していく>
「認知療法」は,このような偏り過ぎた認知=考えに焦点を当てる心理療法の一種です. 気持ちが落ち込めば悲観的になり,考え方が悲観的だとますます気持ちも沈みこむように,感情と物事の見方・考え方(認知)とは密接な関係があります.個人の性格や感情そのものを修正するのは難しいことですし,家庭や治療環境など個人差もあります.ただ自分で自分を苦しめる『負のスパイラル』から抜け出すため,合理的に認知を見直すことが望ましいと思います.
★うつ病で悲観的な思考に偏った,あるいは偏りがかっていて鬱になりやすい傾向があるなら,投薬以外に発症・再発予防を施すのがベスト.100%前向き思考に転換するわけでなく,受け流すことや現実以上に深刻にならないために,トレーニング・ストレスマネジメントしていく...それが認知療法をはじめとする心理療法というもののようでございます.
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